2010年10月31日日曜日

読書の秋....今話題の本を読んでみた

 長かった猛暑も終わり読書する余裕もでてきたので、今話題になっている本を読んでみた。そのうち、皆さんにおススメの何冊かを紹介します。

◆ 「悪人(上・下)
 最近、妻夫木聡、深津絵里の主演で映画化された吉田修一の作品。
どこにでもいる若者(清水)が出会い系サイトで知り合った保険外交員(石橋)を殺害してしまう。その後知り合った女性(馬込)と逃避行する。次第に純愛に発展するが、それは最終的には純愛だったのか.....

 事件にいたる過程で加害者と被害者とその家族など、人間を丁寧に描写している。それがどこにもいそうな人だからリアル極まりない。しかし、よく読んでみるとみんな「悪人」の要素を持っている。殺人で逃亡している清水だけが悪人ではない。本当に悪人なのは誰なのか、人を殺すより「悪人」なのは...と読後に考えさせられる。ハッピーエンドですっきりという種類の本ではなく、その後は自分で考えてしまう作品だった。

 受賞作にふさわしい作品である。映画を観る前に読むも良し、読んでから観るも良し。ただ、文庫本には映画の割引券もついているのでまずは文庫本の購入をお勧めします。




◆ 「告白
 これも松たか子主演で映画化された作品です。
中学教師(松たか子)は幼いわが子を自分のクラスの生徒らに事故死を装って殺害されてしまう。教師にも落ち度がなかったわけではないが、法の裁きではなく自らの手で復讐する。人間にとって一番恐怖を感じる方法での復讐。犯人の生徒らの告白も教師の告白もどこか嘘がある。一度読んだだけではよくわからないかもしれない。二度三度と読み返すとそれが少しずつ見えてくる。熱血先生が登場する学園物を期待してはならない。真実の告白とは......





◆ 「悪の教典(上・下)
 この作品は激しすぎてちょっと映画化は難しいのかなぁというほどの作品。普段サスペンス小説に慣れていない女性や中高生にはお勧めできませんが、今までに見たことがないタイプの作品です。単行本の上下2冊で少々高額になってしまいますが、下手な映画を見ると思えばその何倍も楽しめます。

 内容はネタバレにならないように気を付けますが、完全無欠の教師(蓮実)は共感性が欠如している人間で、幼いころから殺人をなんとも思わなかった子供だった。しかし天才的頭脳ゆえ、その罪を問われたことも裁きを受けたこともなく高校の英語教師になる。なぜ世界のトップビジネスマンの地位を捨てて高校教師になったのか.....

 同僚の高校教諭らは自分の母校にもいたような教師がたくさん登場する。きっと皆さんの高校の先生にもいるはずです。彼らを殺し、生き物を殺し、そして生徒まで何の躊躇いもなく殺す。それも自分が疑われずに.....しかし、......

 この作品は腕のある映画監督にぜひ映画化してほしい。18禁は避けられないだろし、大々的なCMやPVも出しにくいでしょうが、勇気と腕のある監督に期待しましょう。